試験病
内科認定医は合格していた。
全体平均よりかなり低いが、ギリギリである。
平たく言えば、思ったより悪かった。
サマリーの評価も合格最低。
粘って結構頑張ったのに。
色々感じる事はあるけれど、挫折を感じた中学校時代から15年以上に渡るいい点取りたいのに頑張っても取れない症候群、試験病に振り回されるのはもうやめにしましょう。
そんな事で、自分の価値は下がらないよ。
俺は存在してる事に価値がある。
サマリー評価する内科医は、論文とか書いたりしてるんだろうが細かい理論を敷き詰めて粗探しをする。批判的に物事を見がちな医者というやつはどうも好きになれん。
そいつらに何か言われても俺の価値は下がらない。
もう振り回されたくない。
試験の点数が悪くたって、思い通りに行かなくたっていい。
数値化されない事の方が価値があるかもしれないよ。
認定医でいい点取るよりも、草野球で3番ショートで試合に出てヒット打つ方が俺にとってはよっぽど価値がある。
昨日は病院を抜け出して病院の草野球チームの練習をして楽しかった。
ショートも今年30歳を迎えて約10年ぶりに挑戦するが、思ったより動けて楽しかった。
立派なサマリー書いて、いい点数取ったって、上手にゴロを捌けるか?ヒットは打てるか?ヘボいキャッチャーから盗塁くらいできるのか?
ヒョロガリの内科医の評価に振り回されるくらいなら、今すぐ合格通知書はシュレッダーにかけてゴミ箱に捨てよう。
今週も、車で片道2時間かけて田舎の病院に一泊し帰ってきた。
相変わらず総合外来は訳の分からない患者が来て、全く事態が解決できない事にイライラした。
主訴が疾患に一本道に結びつかない場合、いまいち疾患が思い浮かばない時や教科書にないような悩ましい時。
解決できない自分が嫌になり、イライラする。
看護師さんさえ、自分にプレッシャーをかける敵に見える。
体は緊張して、交感神経が昂ぶり、眉間に皺が寄る。
患者や家族の陰性感情などに全て応えるのは疲れる。というか無理だ。
無理な事は無理なんだ。
全部の事は聞けないよ。
今解決できる事やすべきことを読み取って、解決するのが外来の役割だが、無理なものは無理なんだ。
そう言い聞かせないと、内科以外の全てのゴタゴタが集まる地域唯一の総合病院の内科総合外来なんて乗り切れない。
午後の大腸カメラにしても、一緒。
25分くらいS状結腸でウロウロしていた。
プッシュで曲がり角を押し込んだら、ループを作ってカメラが入らん。
上級医は何も言わず、後ろで見ていて、仲の良い元同期も見つめる。
最初はこれがダメな俺なんよと割り切っていた。
これで出来なくても俺の価値は変わらない。
むしろ、役に立ってるんだから。
人が足りなくて呼ばれてるんだから上級医から怒られて、もう来るなとは言われないだろう。
しかしだんだんと出来ない自分やそれを良しとする自分に怒りが湧いて来た。苦しんでいるのに上級医が何も言わず、見るだけなのも腹が立った原因だったかもしれない。
ふざけるな、俺にも意地がある。
やってみせるぞと、右往左往してると何かの拍子にうまい具合に腸のたわみに抑えが効いたのかただ押し込んでたわみまくった腸を力づくで押し込んでたまたま入ったのか分からないが、とりあえず奥に行けた。
患者さんには申し訳ないが、力任せのプッシュ大腸カメラでほぼ最後まで辿り着いた。最後は少し上級医が手伝ってくれたが。
しかし終わったら疲れが出た。
昨日の夜は一応呼ばれない当直だが、病院で寝泊まりするからゆっくり寝られない。
おまけに帰りも2時間運転して帰るから疲れてしまった。
医局長に怒りが湧いてくる。
こんなん割りに合わんな。移動距離100キロを毎週とかね。
体力あるうちはいいけど、運転手欲しい。
完全にいいように使われてる。
この病院はコメディカルとか含めてみんな人はいいけど、仕事はそれなりに大変。
腹立ってきたから来週の健診、自分の発達障害のセカンドオピニオンの日だから休ませて貰おう。
明日も胃カメラを1人5分でさばく。
胃カメラも好きというよりは外来よりはマシなだけなんだよな。
イライラ病は治らず。なんだかなあ。
眠いのでもう寝よう。